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『三津……君は無意識に男を手玉に取ってるんだよ?知ってる?』
腕の中で唸り声を上げながら額を押し当ててくる姿を苦笑いで見下ろした。
そこいらの遊女よりたちが悪いんだ。
「すまない……嫌な気分をさせてしまうその分いっぱい一緒に散歩に行こう。」
「行く……。」
背中に手を回して胸に顔をすり寄せてくる仕草に笑みを溢した。眉心紋消除
「とても名残惜しいが職務を放り出して来てしまった……戻らねば……。」
「……嫌……もうちょっとだけ。」
心が離れてた分,少しだけでも近くに居たかった。
「……仕方ないねぇ。三津が言うのなら聞かない訳にはいかないよ。」
自分だって素直じゃない。“私も離れたくない”と言えばいいのに。
こうして三津が引き止めるなんてこの先あるのだろうか。
滅多に言わないわがままだから,離れられないのを三津のせいにした。藩邸に帰った入江は高杉を探した。
「あ,アヤメさん晋作知らない?」
廊下を歩いていたアヤメを引き止めた。
「たっ!高杉さんなら乃美様と久坂さんに説教されてますっ!」
入江に声をかけられて緊張したアヤメはぴんっと背筋を伸ばし,上ずった声で答えた。
「そうか。でもまだ足りないから後で稔麿と一緒に追加の説教だな。」
土下座で許しを乞う高杉の姿を目に浮かべて喉を鳴らした。
「高杉さんは今日は何をやらかしたんです?」
「三津さんを追い回して迷子にさせたんだ。」
アヤメは桂が血相変えて飛び出て行った理由はそれか!と納得した。
「でも三津さんが外に出たのは桂さんの責任だから桂さんが晋作を責める権利はないけどね。」
入江が少し怒気を含ませたのをアヤメは気付いた。
「あの……入江さんにとって三津さんはどんな人ですか?」
不安げな顔で入江の目を見たがすぐに視線を下に向けた。
「それは居てもらわないと困る存在だよ。
アヤメさんも三津さんが居た方が楽しいでしょ?」
首を傾げて口に弧を描かせた。そうすればアヤメの顔は赤くなっていく。
「そうですね!三津さん居た方が賑やかで楽しいですっ!わっ私はこれでっ!」
アヤメは失礼しますっ!と勢い良く頭を下げて立ち去った。
『……単純。』
どっかの誰かさんと似てるかもな。そんな事を思って笑みを浮かべた。
『あぁそうだ。斎藤一と何の話をしながら帰って来たか聞くの忘れたな〜。』
明日にでも聞き出すか。嫌そうな顔をしつつも“絶対に言わないで下さいね?”って前置きして話してくれる姿を思い浮かべ,にやにやしながら廊下を歩いた。
「じゃあ戻るけど今日はもう外に出ちゃ駄目だからね。
どんなに遅くなっても必ず帰って来る。愛してるのは三津だけだよ。」
何度囁かれても慣れない甘い言葉に真っ赤な顔で頷いてお見送り。
そんな甘い言葉に溶かされてった女は一体何人いるのやら。
『アカンアカン考えんとこ。』
悪い考えを吹き飛ばすように頭を激しく左右に振った。
『藩邸について行けたらいいねんけどなぁ……。』
高杉の迫り来る姿を思い出してぶるっと体を震わせた。
『何かいい方法ないやろか。』
上手く交わして尚且つ長州へ戻す策は無いものか。そこで三津に変な闘争心が芽生えた。
何故自分が逃げ回らなければならない?
自分の安息の地を乱されて黙っていていいのか?
やられっぱなしでいいのか?
あぁ……私はいつからこんなか弱い女になったんだ……。情けないぞ三津!
ぐっと拳を握って己を奮い立たせた。
『負けられん……!』
ならばまずは敵の情報を手に入れよう。三津は桂の帰宅を心待ちにした。
嬉しいことに桂は早めに帰宅してくれた。
高杉に説教をしていたら職務への集中力を削がれたからと笑った。
早く帰りたかったしいい口実になったんだ。
夕餉を前にして三津は早速聞きたかった事をぶつけた。
「高杉さんの弱点知ってます?」
「ぐっ……!げほっ!じゃ?弱点?」
米粒が気管に入って噎せ返る。目の前の三津は至って真剣な眼差しで教えて教えてと見つめてくる。嫌な予感しかしない。