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目の前の三津はどこか哀愁の漂う

目の前の三津はどこか哀愁の漂う雰囲気を纏ってお酒を口にしている。その姿がいつもと違ってどことなく色気があるなと思いながら入江は見ていた。

 

 

「何を聞きたいの。分かる範囲なら話すけど?」

 

 

「三津の口から聞きたいんです。」

 

 

自分は誰よりも三津を知ってるぞと言う自慢はいらないと笑顔で毒づいた。

 

 

「呑んだらすぐ寝てしまうよ?」 眉心紋消除

 

 

「そこは武人さんの腕の見せ所でしょ。」

 

 

入江と桂は三津を囲む輪から少し離れてその様子を見ていた。

 

 

「なぁ嫁ちゃん何でそんなに死にかけとるそ?」

 

 

山縣の質問には私だって知りたいよと嘆いたが大体の理由は宙ぶらりんの自分の立ち位置と桂と恋に落ちたせいだと分かってはいる。

 

 

「その土方は三津さんの何やったん?」

 

 

赤禰は新選組や土方の名は吉田や久坂から送られてくる文で知っていたが何がどう繋がるのか分からんと首を傾げた。

 

 

「土方さんは私の元雇い主です……。」

 

 

三津は新選組で女中をしていた事やそれから小姓にされた事を説明したが土方の女と言う肩書きに関しては何でそうなったか全然分からないとまた嘆いた。

 

 

……桂さん。送り込んだ間者の勘違いでそうなったのは教えた方がいいですか?」

 

 

入江に小声で問われて桂は首を小さく横に振った。

 

 

「ですよね。私も言わない方がいいと思います。それに土方も三津連れ歩いてたけぇどのみち勘違いはされてましたよね。余計な事言うのは今はやめときましょう。」

 

 

桂は何度も首を縦に振った。それから二人はまた輪の雑談に耳を傾けた。

 

 

「その元雇い主は嫁ちゃんに惚れとったんやんな?」

 

 

「そこですよ!いっつも罵声浴びせるし,こんな貧相な体に欲情せんって女として全然見てへんし怒ったら拳骨してくる人やったのに,何で好きなのに気付かん?ってまた怒られて意味分からんのですよ!私に男心なんて分かりません!」

 

 

畳に突っ伏して土方さんの馬鹿と泣き出した三津の背中を赤禰が優しく擦ってやった。

 

 

「嫁ちゃん男運ないな?」

 

 

男心とかの問題じゃねぇわと山縣は呟いた。「運悪く桂さんに引っ掛からなかったら危険な目に遭わずに済んだかもしれないんやけどねぇ……。」

 

 

伊藤がぼそりと呟いて桂を横目で見た。

 

 

「そこは否定しない……。」

 

 

三津に対して謝罪するしかないのは実際そうだと肩身の狭い思いをする桂に入江が助け舟を出した。

 

 

「俊輔言いたい事は分かるがあんま責めんな。桂さんだって三津の事思って色々手は尽くしとるんや。まぁ……最後裏切っちょるけど。」

 

 

「庇うふりして傷を抉るのはやめろ。」

 

 

くくっと喉を鳴らす入江の耳を桂は横からこれでもかと言うぐらい引っ張った。

 

 

「なぁ桂さんは三津さんの事どんな風に口説いたそ?」

 

 

高杉が三津の頭をぺんぺん叩いて問いかけると三津は突っ伏した状態から体を起こした。

 

 

「口説く……口説かれた記憶はないです……。会ったら相談相手になってくれてて……。たまに偶然会えるのが嬉しくて。でも会えたのは数えるぐらいで。」

 

 

記憶を辿ってぽつりぽつり話し始めた三津に赤禰はさり気なく少量ずつ酒を呑ませた。

 

 

「お三津ちゃんホンマに偶然会えたんやと思ってる?」

 

 

幾松の言葉に三津はどう言う意味?と小首を傾げた。

 

 

「幾松。」

 

 

桂は咳払いと低い声で余計な事を言うなと牽制するが幾松は知らん顔。

 

 

「あの人暇さえあればお三津ちゃんの周り彷徨いてたんよ。偶然ちゃうで。」

 

 

「えっ怖っ。」

 

 

文の冷めた目に桂はまたも心を抉られた。もう抉られ過ぎて穴が開きそうだ。だがちゃんと釈明はせねばと声を上げた。

 

 

「違うぞ本当に偶然だった。はっ初めの頃は……

でも段々会えなくなって……でもどうしても会いたくて外に出る用事があった時は探したりはしてた……それは認める……。」

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