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debsy 3rin

「さぁそれはどうでしょう。

「さぁそれはどうでしょう。

あいつが一人で出歩けば必ずと言っていい程不逞浪士に目をつけられる。

副長の狙いはのこのこ現れたそいつらの捕縛。」

 

 

「あんなお嬢ちゃんでも使えるモンは使うってか。

まぁ副長らしいっちゃ副長らしいわな

よっしゃ俺はお嬢ちゃんとこでお茶飲もっと!」

 

 

『まぁどこまでが本心か分からんがな。』眉心紋消除

 

 

三津が甘味屋に帰ってからも護衛をつけると土方は言った。

見回りの順路にも甘味屋の近くの通りを組み込んだ。

 

 

それはあわよくば,三津から新選組の情報を得ようと近付く不逞浪士捕縛の為。

 

 

また三津を囮にするような内容を語ったのだが,単に土方が離れていても三津の全てを把握したいだけとしか思えなかった。

 

 

そんな事を考えながら三津の元へ足取り軽く駆け寄って行く山崎の後ろ姿をじっと見つめた。

 

 

「お嬢さんお茶を一杯!」

 

 

人懐っこい笑みを浮かべながら表の長椅子にどっかり腰を下ろした。

 

 

「あれっ?斎藤さんのお友達の!」

 

 

「覚えててくれはったん?いやぁ嬉しいわぁ!」

 

 

大袈裟に喜んで馴れ馴れしく三津の手を握って上下にぶんぶん振った。

 

 

「薬売りやったんですか。」

 

 

前会った時は違ったような気がする。

首を傾げながら背中にしょった籠と薬の幟をしげしげと見つめた。

 

 

「せやから前に足に塗った薬良く効いたやろ?」

 

 

山崎が得意げに笑うと三津もそう言えばそうだと,ポンと手をついた。

それからあの時はありがとうございましたと頭を下げた。山崎の正体も知らずに三津はにこにこと笑う。

 

 

『あいつに警戒心と言うものは無いのか。いや,一応あの人が客だからか。』

 

 

それが仕事とはいえ,三津が誰にでも愛想良くしているのを見て土方や沖田がどう思うのか。

斎藤はそこが気になって仕方ない。

 

 

 

 

 

 

「ほんでお嬢ちゃんは新選組のお女中さんやなかったんかいな?」

 

 

山崎は周りの目を気にしながら小声で三津に問いかけた。

 

 

「それが私の寝言が煩くて土方さんが寝不足になってもて。

それで十日ほど帰れって追い出されたんです。

寝言を言わんくなる薬とかないんですか?」

 

 

三津はお恥ずかしいと照れ笑いをしながら小首を傾げた。

 

 

「それやったらいい方法があるわ!」

 

 

力強い言葉に好奇心を掻き立てられた。

山崎にちょいちょいと手招きされて顔を寄せる。

 

 

「俺が添い寝したるわ。勿論腕枕でな。そしたら安心してぐっすり眠れて寝言なんか言わんで。」

 

 

ぐっと顔を寄せて,目を細め,口は弧を描いて色男を演じてみせた。

格好良く口説いたつもり。三津が照れて顔を真っ赤にするのを期待した。

 

 

「やっぱり斎藤さんの友達や!面白い事言わはる!」

 

 

思い切り笑われた。

面白い事を言ったつもりはない。

 

 

「何や添い寝はお断りか?」

 

 

と言ってみても,毎日家に来てくれる?だとか屯所に帰っても壬生まで来るの?だとか。

屯所だと土方と川の字で寝なきゃねと悪戯っぽく笑うだけ。

 

 

「ホンマに行くかもしらんで?後は恋煩いに効く薬もあるから何かあったら言ってな。

ほな仕事に戻りますわ!」

 

 

おどけて見せてから,名残惜しいけどと手を振って軽快に走り去った。

 

 

「三津,今の人は?」

 

 

随分親しげにしていたのが気になってトキが顔を出した。

 

 

「斎藤さんのお友達。あ,おばちゃん宗の所行って来ていい?」

 

 

「かまへんよ,行っておいで。」

 

 

その言葉に満面の笑みを浮かべ,たすき掛けに前掛けのままで出掛けて行った。

三津が店を出たのに合わせて斎藤も腰を上げた。

 

 

『多分あいつの所に行くんだろうなぁ。』

 

 

斎藤にとっては苦手とも言える相手。

前回三津を尾行をした時,簡単に存在に気付かれた苦い思い出が蘇る。

 

 

だがそんな事が二度も起こるはずもない。

だって自分は新選組の斎藤一だから。

今度こそバレずに三津を見張ってやると密かに意気込んだ。

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